戸建ての火災保険は必須?新築・中古での違いはある?プランの選び方や相場、加入時のポイントを知っておこう

最終更新日 2024年09月03日
戸建ての火災保険は必須?新築・中古での違いはある?プランの選び方や相場、加入時のポイントを知っておこう

自分や家族の生活を守るために重要な火災保険。諸費用を抑えたい気持ちから、保険の契約や補償内容を充実させることに消極的になるかもしれませんが、火災などの災害のリスクは常に存在し、家の修繕や再建には多額の費用がかかります。この記事では、戸建ての火災保険を適切に選ぶ際のポイントや保険料の相場・目安、新築・中古の違い、保険の特約、地震保険など加入時に知っておきたいことについて、ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに聞きました。

一戸建ての火災保険は必要?入らないとどうなる?

法的な加入義務はないが住まいに必須の保険

まず、火災保険の加入は法律で義務付けられているものではありませんが、住宅ローンを借りる場合は建物を対象にした火災保険の加入が必須になります。そのほか、以下のような加入メリットがあります。

もらい火のリスクがある
自分が火災に気をつけていても、他人の火災による「もらい火」のリスクがあります。失火責任法(失火ノ責任二関スル法律)により、失火者に重大な過失がない限りは損害賠償請求ができません。また、失火者に賠償する力がない可能性も考えられます。そのため、自らの火災保険で備えることが重要です。

火災保険で住まいに関するあらゆるリスクに備えられる
契約した保険のプランにもよりますが、火災保険の補償範囲は非常に広く、火災(火事、落雷、破裂・爆発など)だけでなく、風災(台風、雹(ひょう)災、雪災)、水災(豪雨、洪水、土砂災害)、水濡れ、盗難など、さまざまなリスクをカバーしてくれます。これにより、さまざまな災害や事故から家を守ることができます。

火災保険に加入していないと、もらい火を含めた火災、水災、風災などさまざまな被害から全額自己負担で生活を立て直さなければならず、大きなリスクを抱えることになります。ぜひ入っておきたい保険と言えるでしょう。

それでは、住まいの保険の中心となる火災保険の選び方の4つのポイントを見ていきましょう。

一戸建ての火災保険の選び方 保険の対象を決める

保険の種類は火災保険と地震保険の2種類

家を守る保険は、基本的に火災保険と地震保険の2種類。その中でも火災保険は、火災だけではなくさまざまな被害を補償してくれる、住まいの総合保険のような役割です。しかし、火災保険ではカバーできないのが、地震・噴火・津波による被害。これらは地震保険に加入しなければ補償されません。地震が原因で起こった火災も、火災保険ではなく地震保険の範囲です。

火災保険と地震保険は、「建物」を対象にしたものと「家財」を対象にしたものに分けられます。「建物」では住宅そのもの、「家財」では、家の中にある家具や家電、衣類、自転車、総排気量125cc以下のバイクなどが保険の対象になります。

まずは、保険の対象を決めます。「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」のいずれかを選びましょう。「建物のみ」と「家財のみ」を別々の保険会社で契約することも可能です。

建物と家財保険は火災保険、地震保険それぞれにかける
火災保険と地震保険で補償する被害が異なり、保険の対象は建物と家財で分かれる(図版作成/SUUMO編集部)

家財を保険に含めるかどうかは、各保険会社が提供する家財の簡易評価額や保険料シミュレーションを活用するのが良いでしょう。このようなツールを使って、家財の金額や保険料の目安を事前に把握しておくと、適切な保険選びができます。

「一戸建てに住む方には、地震保険の建物と家財の両方に加入することをおすすめします。地震で被災した場合に受けられる公的支援は「被災者生活再建支援制度」のみ。給付金は最大でも300万円なので、家を建て直すにはとても足りません。地震保険に加入し、自助努力をしておくことが大切です」(ファイナンシャルプランナー 竹下さん)

一戸建ての火災保険の選び方 補償内容を決める

火災保険によって、以下の6つのリスクに対する補償が組み合わせられています。保険料、保険対象の状況、地域の自然災害リスクなどを総合的に勘案し、自分に必要な補償を考えましょう。

1.火災、落雷、破裂・爆発に関するリスク

火災、落雷、ガス爆発などによる損害をカバーします。

2.風災、雹災、雪災に関するリスク

台風や強風、雹、積雪などによる被害を補償。日本は台風や雪害が多い国ですので、これらのリスクに備えることは重要です。

3.水災に関するリスク

台風・暴風雨・豪雨などによる、洪水、高潮、土砂災害などの水害を補償。一戸建ての場合、マンションなどの上層階に住むよりも水災に遭うリスクは高いと言えます。水災のリスクを知るには、その地域にどのような災害の危険があるのかを示した「ハザードマップ」が参考になります。

「最も保険料に影響するのは『水災に関するリスク』です。河川の近くや水害のリスクが高い地域に住んでいる場合は、この補償が重要です。ハザードマップは水災のリスクを知る手段のひとつですが、マップ上で浸水エリア外だったにも関わらず浸水被害に遭った事例もあります。災害のリスクを調べるときは、ハザードマップだけに頼らず、過去の災害時の被害状況などさまざまな角度からチェックしましょう」

4.水濡れ、物体の落下・衝突等、騒擾(そうじょう)等に関するリスク

給排水設備の破損による水濡れや、外部からの物体の落下や衝突、暴動や騒乱などによる被害をカバーします。

5.盗難に関するリスク

盗難によって、保険対象の建物や家財に生じた窃取や損傷をカバーします。
「『水災に関するリスク』に次いで保険料が高いのが、『盗難に関するリスク』です。一戸建てはマンションなどの共同住宅と比較すると盗難の被害件数が多いため、備えておきたい項目です」

侵入窃盗の発生場所別認知件数(令和6年)
侵入窃盗(住居等に不法に侵入して行われた窃盗)は一戸建て住宅が30.5%と最も高い(住まいる防犯110番|警視庁)令和5年度(2023年)(図版作成/SUUMO編集部)

6.破損・汚損など不測かつ突発的な事故に関するリスク

日常生活で予期せぬ事故による破損や汚損をカバーします。
「例えば、家具の移動中に壁を傷つけた、猫が花瓶を割ってしまった、子どもが誤って家電を壊してしまったなど、日常生活におけるさまざまなアクシデントをカバーしてくれます」

これらの補償内容をふまえて選ぶことが大切です。保険料だけでなく、実際にどのようなリスクに対して備える必要があるのかを考慮しましょう。

一戸建ての火災保険の選び方 保険金額を決める

保険金額とは、保険事故が発生した場合に保険会社が支払う損害保険金の限度額を指し、保険金額は「保険金額=評価額」となるように設定されます。評価額は、現在の価格で同等のものを再購入または再建築するための価格(再調達価格(新価))が基準になります。つまり、保険金額=被害に遭ったとき保険対象を現在の価格で買い直す、もしくは再建築するのにかかる費用ということ。

こちらは、保険会社によって算出の仕方が異なるので加入前にチェックしましょう。保険金額を高くしても、実際の損害額以上の補償はされません。

一戸建ての火災保険の選び方 特約の内容を決める

特約とは、保険につけられるオプションのようなもの。保険会社ごとに、さまざまなニーズに応えた特約を用意しています。一戸建てに住む人に人気の特約を紹介します。

個人賠償責任特約

他人に怪我をさせたり他人の物を壊したりしてしまい、損害賠償責任を負った場合、保険金が支払われます。自動車保険や傷害保険にもつけられる特約であるため、すでに加入している保険と重複していないか確認しましょう。
補償される例:自転車に乗っていて、通行人にぶつかり怪我をさせてしまった

類焼損害補償特約

自宅で火事を起こしてしまい、近所の住宅・家財を類焼させてしまった場合、保険金が支払われます。類焼先が火災保険等に加入していた場合は、その火災保険から支払われる金額を損害額から引いた差額が支払われます。
補償される例:自宅で予期せぬ火事が起きてしまい、隣家の物置に延焼してしまった。

「自宅の出火が原因で近所に類焼してしまっても、重大な過失がない限りは損害賠償を請求されることはありません(失火責任法)。しかし、類焼先の方が十分な保険に加入していなかった場合、その方が自腹で修理や買い替えをしなければならなくなってしまいます。いくら法的に支払いの義務がないと言っても、ご近所さんとの禍根は残したくないもの。類焼損害補償特約に加入していれば、類焼先に支払われる保険金と実際の損害額の差額が補償されます。特にご年配の方に人気の特約です」

地震危険等上乗せ特約

通常、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の50%までですが、それを100%(全額補償)にできる特約です。
補償される例:地震によって建物が全損(主要構造部の損害の額が、その建物の時価の50%以上となること)してしまった。

他にも、建物の外に持ち出した物に損害が生じたとき補償してくれる「携行品損害補償特約」や建物などに損害が生じた場合に臨時の宿泊費や交通費を補償してくれる「臨時費用補償特約」などがあります。特約については、各保険の公式サイトやWEB約款で確認できます。

一戸建ての火災保険を選ぶときは、保険の対象、補償内容、保険金額、特約の4項目で自分の希望を決め、各社の保険の中でどれが自分に合っているか比較検討します。

「住宅購入のタイミングで火災保険に加入した人の中には、『大量の書類確認に追われ、よくわからないまま契約してしまった』という声も多いです。しかし、日本は災害大国。住まいは常に天災や事故に遭うリスクを抱えています。自分に合う保険に加入しているかどうかで、いざというときに生活を立て直すスピードが大きく変わってくるもの。必要な補償が得られる保険かどうかしっかり確認しましょう」

火災保険選び
自分の住環境を取り巻くリスクと保険料を勘案し、ベストな保険選びを(写真提供/PIXTA)

一戸建ての火災保険の料金の相場は?

火災保険の保険料は、建物(家財)の評価額、所在地や占有面積、構造区分、補償内容、保険期間などによって変わるため、いくらが相場と言い切ることはできません。目安として、代表的な火災保険の保険料と特約は以下のとおりです。保険料が割安になる契約期間の最長5年間で試算しました。

シミュレーション条件

東京都、新築木造一戸建て、建物保険金額2000万円、家財保険金額500万円。補償内容は火災、風災、水災、水濡れ、盗難、破損・汚損。契約期間は5年間で試算。

一戸建て火災保険の保険料(5年間)と特約
保険料 付帯している/可能な特約(一部)
火災保険(建物・家財) 火災保険(建物・家財)

地震保険(建物・家財)
ソニー損保
ソニー損保の新ネット火災保険
160,439 円 377,819円 個人賠償責任:3億円
類焼損害補償:1億円
地震危険等上乗せ:あり
日新火災
お家ドクター火災保険(すまいの保険)
112,260円 329,640円 個人賠償責任:保険証券記載の支払限度額
類焼損害補償:1億円
地震危険等上乗せ:なし
東京海上日動
トータルアシスト住まいの保険
155,630円 373,010円 個人賠償責任:国内は無制限、国外は1億円
類焼損害補償:1億円
地震危険等上乗せ:なし ※
楽天損保
ホームアシスト(家庭総合保険)
157,230円 374,610円 個人賠償責任:保険証券記載の支払限度額
類焼損害補償:1億円
地震危険等上乗せ:なし
ジェイアイ傷害火災
iehoいえほ(補償選択型住宅用火災保険)
133,630円 351,010円 個人賠償責任:1000万円、3000万円、5000万円、7000万円、1億円の中から選択
類焼損害補償:1億円
地震危険等上乗せ:なし
各保険から特定の情報を抜粋したものです。詳しくは各保険の公式情報をご確認ください。加入をおすすめするものではありません。※同社の超保険「住まいに関する補償」には地震危険等上乗せ補償特約あり(SUUMO編集部調べ(2024年7月)

上の表は5年間の契約をした場合の保険料です。それぞれの1年あたりの支払額は以下のとおりです。

火災保険(建物・家財)で契約した場合の1年あたりの支払額

  • ソニー損保「ソニー損保の新ネット火災保険」:3万6974円
  • 日新火災「お家ドクター火災保険(すまいの保険)」:2万5130円
  • 東京海上日動「トータルアシスト住まいの保険」:3万4420円
  • 楽天損保「ホームアシスト(家庭総合保険)」:3万5370円
  • ジェイアイ傷害火災「iehoいえほ(補償選択型住宅用火災保険)」:2万9100円

火災保険(建物・家財)+地震保険(建物・家財)で契約した場合の1年あたりの支払額

  • ソニー損保「ソニー損保の新ネット火災保険」:8万3224円
  • 日新火災「お家ドクター火災保険(すまいの保険)」:7万1380円
  • 東京海上日動「トータルアシスト住まいの保険」:8万670円
  • 楽天損保「ホームアシスト(家庭総合保険)」:8万1620円
  • ジェイアイ傷害火災「iehoいえほ(補償選択型住宅用火災保険)」:7万5350円

火災保険を安くする方法は?

上の「一戸建て火災保険の保険料(5年間)と特約」の表にあるとおり、保険料は保険会社によって大きく違います。保険料を安く抑えたい人は、まず保険会社選びから見直してみましょう。

すでに加入したい保険があり、少しでも保険料を低く抑えたい場合、以下のような方法もあります。また、保険料の高さが気になっている人は、更新のタイミングで他の火災保険への変更を検討してみましょう。

  • 不要と思われる補償内容や特約を外す
  • 免責金額を設定する
  • 割引を活用する
  • ネットで契約する

補償内容や特約は、ものによって外すことができ、保険料が安くなります。免責金額とは、保険金が支払われるような事故や災害が起きたとき、契約者が自己負担する金額のこと。免責金額を設定しておくことで保険料が抑えられます。また、火災保険には各社が用意した割引があります。メジャーなものでは、築浅住宅割引、オール電化住宅割引、証券ペーパーレス割引、インターネット契約割引など。活用を検討してみても良いでしょう。

火災保険を選ぶ夫婦
火災保険は今の生活に合っている?保険料は適切?更新のタイミングで見直しを(写真提供/PIXTA)

戸建ての火災保険、新築と中古で違いはある?

建物の評価方法が変わる

新築と中古で、建物の評価方法が異なります。新築の場合、建築価格がそのまま評価額となります。一方で中古住宅は、新築年と新築時の建築価格が判明している場合は「年次別指数法」、それ以外の場合は「新築費単価法」によって評価されます。「年次別指数法」の方が実態に応じた評価が可能です。

保険料や加入条件には「新築か中古か」ではなく、築年数が影響する

保険料や加入条件に大きく影響するのは築年数です。築年数が古いと築浅割引が受けられないだけでなく、保険料が割高になることもあります。特に築40年以上の建物は老朽化が進んでいるとされ、築50年を超えると加入できる保険が限られてくる傾向にあります。

築年数が古すぎて火災保険に加入できないことはある?

築年数が古いと火災保険への加入を断られることもありますが、「築何年だと加入お断り」と具体的な基準が決まっているわけではありません。加入が可能かどうか、まず保険会社に問い合わせてみましょう。

築年数がネックとなって火災保険が見つからない場合は、こくみん共済coop(全労済)の火災共済「住まいる共済」や都道府県民共済の新型火災共済を検討しましょう。これらの共済は築年数に関係なく加入できます(2024年6月現在)。

火災保険は地震保険とセットで、戸建ての住まいに必須とも言える保険。自分にどのような補償が必要なのか調べ、最適な火災保険を見つけましょう。

まとめ

家を守る保険には「火災保険」と「地震保険」があり、それぞれ建物と家財に対してかけられる

火災保険の加入に法的義務はないが、住宅ローンを使うなら建物の火災保険への加入は必須。地震災害は地震保険に加入していないと保険金の対象にならない

火災保険選びでは、保険の対象、補償内容、保険金額、特約の4つの観点から絞り込む

保険料に影響するのは新築か中古かよりも築年数。築古が理由で保険選びに難航したら、火災共済も選択肢に入れよう

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